離職率低下の5つの対策とは?事例でキャリアコンサルタントが解説

世の中には、離職率対策といわれているものは数多くあります。

「コミュニケーションの活性化のための取り組み」

「人事・評価制度改革」

「教育研修の実施や福利厚生の充実」

「給与や賞与の見直し」

「外部コンサル」

「ツールの導入」

数えだすときりがありません。

離職率に課題のある企業はこれらのいずれか、あるいは複数の取り組みを実施して改善を図っていますが、その効果には差があります。

今回は、5つの事例をもとに効果のある取り組みとその導入方法をご紹介したいと思います。

【事例①】コミュニケーション活性化の取り組み

コミュニケーション不足による職場環境の悪化

医療従事者に特化した人材紹介業を展開するA社。

A社は、営業担当者の定着率が悪く、入社3年後までに約半数が離職していました。

そのため、常に中途募集を行っていましたが、コミュニケーション活性化の取り組みなどにより現在は離職率10%以下で推移しています。

A社は、まず自社の問題点を社員にヒアリングし、「社員間のコミュニケーション不足による職場環境の悪化」と定義しました。

特に営業担当者同士の意思疎通不足は深刻で、担当エリアの空白や重複、手柄の奪い合い、足の引っ張り合いなどが起こっていました。

取り組み

そこで、毎週月曜日の午前中に「懇談会」という名の意見交換の場を設け、営業担当者同士が先週の実績、今週の目標などを共有するようにしました。

担当者が持ち回りでオーガナイザーを勤め、一人一人の報告に対してコメントするルールを作ったところ、お互いの仕事に関心を持つことで関係改善が進み、離職率の改善だけでなく業績改善にもつながっています。

【事例②】社員全員に連続休暇取得の取り組み

慢性的な人材不足

2業態、30店舗の飲食店をチェーン展開するB社。

B社は、店舗スタッフの大多数をパート・アルバイトで賄ってきましたが、正社員の定着率が悪く慢性的な人材不足に悩まされてきました。

離職原因の多くは労働環境への不満であり、特に店舗間での休日取得数のばらつきは大きな問題でした。

B社では、店舗の正社員に店舗運営の責任を負わせています。

そのため、繁忙期である年末年始、ゴールデンウィークには休みが取れず、スタッフの急な欠員には休日返上して出勤しなければならないケースが日常的にありました。

長期休暇を取得する制度はあるものの、店舗の裁量で取得していたため取得率に差が生じていたことも不満につながっていたようです。

取り組み

そこで、社を挙げて長期休暇取得キャンペーンを実施し、全社員に4日以上の連続休暇を年2回取得することを義務付けました。

まず、店長に自身と部下社員の休暇計画を提出させ、計画通りに取得することが難しい店舗へは本社スタッフがヘルプ勤務することで全社員の休暇取得を達成しました。

キャンペーン終了後も継続して取り組むことで、労働環境に関する意識が高まり、今では年間離職率が半減しています。

【事例③】副業の許可に関する取り組み

隠れて副業を持つ若手社員

繊維製品の卸売を行うC社。

C社は、全社的に残業がほとんどなく、休日出勤も年数回程度と労働環境は良好でしたが、年功序列色が強く、管理職ポストは40代以上の職歴の長い社員であふれていました。

しかし、発展的な事業展開が出来ずポストの新設や給与アップを断行することが難しかったC社は、社内でのキャリア形成に限界を感じ、離職する若手社員、かくれて副業を持つ若手社員が後を絶ちませんでした。

取り組み

そこでC社は一定のルール※のもと社員の副業を解禁した結果、「業務面」「給与面」の課題を一気に解消し、離職率は大幅改善に成功しました。

今では30代以下の約半数が何らかの副業を持っているそうです。

※一定のルールとは、副業の「業務内容」「従事時間」、現業務の「守秘義務」などに関すること

【事例④】キャリアコンサルティングの導入

うつによる離職

インターネット広告を請け負っているD社。

D社は、うつなどの精神疾患を発症した社員に対する早期発見や復職へのケアが不十分であったことなどから、多くの離職者を出していました。

取り組み

定期的なキャリアコンサルティングを導入したことがきっかけで、社員のメンタルヘルスケアに対する意識が高まり、離職率も改善傾向にあります。

きっかけは、人材開発支援助成金の制度導入コース※でしたが、就業規則に「入社2年目の全社員を対象としたキャリアコンサルティングの実施」を盛り込んだことから、メンタル不調の早期発見が可能となりました。

また、30年度からは従業員数が50名未満であるため義務化対象外であるストレスチェックも実施するなど、複合的な取り組みをすることによって、社員のメンタルヘルスケアを推進しています。

※人材開発支援助成金「制度導入コース」は、平成30年4月1日より廃止となっています。

【参考資料】

>>厚生労働省  人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース)

【事例⑤】目安箱の設置

中食チェーンを5店舗展開するE社は、社員用の目安箱を設置しました。

きっかけは、店舗にある客用の「ご意見箱」から商品やサービス、内装に係るヒントを得て顧客満足度が向上したことでした。

そこから、従業員満足度の向上を目的として2年前に全店舗で設置した所、1年間で100通を超える投稿が集まりました。

・設備の修繕

・新メニューの提案

・開店時間の縮小

・労働時間の改善

投稿の内容はさまざまで、全社員が閲覧できるグループウェア上に毎月匿名で掲示されるほか、すべての投稿に社長がコメントを付けています。

社員は、自分の意見が採用されない場合もその理由を知る事が出来る為、モチベーション管理として定着しています。

なお、正社員だけでなくパート社員も投稿できるようです。

さいごに

制度改革や社外サービスの導入から、箱を一つ置くだけで簡単に出来るものまで、離職率対策には様々な形があります。

しかし、これらの対策はお金や手間をかければ相応の効果が表れるわけではありません。

ただやみくもに実施するのではなく、まず自社の置かれた状況を正確に把握することが大切です。

さらに、どれだけ効果のある対策も、やりっぱなしでは効果が持続しません。

数字を根拠として修正、調整をしながら継続して実施する事こそ、本当の離職率対策と言えるのではないでしょうか。

植前 健太郎

産業カウンセラー 国家資格キャリアコンサルタント

飲食・流通業界出身。企業・自治体・学校と幅広い領域にてキャリアサポートを行う。

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