パワハラ防止のために法制化がいよいよ始まるようです(2018年11月18日時点)。
一体どのようなものになるのか、その背景と内容予測をしてみたいと思います。
>>【社労士解説】パワハラ問題まとめ〜定義・対策・事例・相談先・訴訟〜
パワハラ防止の法制化の背景は?
平成もまもなく終わろうというこの時代に、パワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」は全国の都道府県労働局への相談が15年連続して増加しています。
パワハラは様々な問題へと発展していくため、厚生労働省としても看過できなくなったと思われます。
また「働き方改革」を進める意味(だれもが働きやすい職場環境をつくること)の観点からも重要であると捉えられているはずです。
パワハラのリスクは?
これまでもパワハラについて一連のコラムで執筆をしてきました。
パワハラは行為を受けた者も、周りで見ている人も決して愉快なものではありません。
就業環境を悪化させ、就業意欲を減退させるだけではなく、大きな問題に発展すれば、行為者も組織も民法上の不法行為で訴訟を起こされる可能性があります。
パワハラの法的な位置づけについて
現在の法律では「パワハラ」は定義されていません。
これはセクハラとマタハラと大きく異なる面であり、このことが混乱に拍車をかけている可能性があります。
すなわち、行為者は指導の一環のつもりでしていることが実はパワハラになっていたり、あるいは行為をされた側からは自分の責任や能力は棚にあげ、厳しい指導は何でもかんでもパワハラっと言って騒ぐ可能性もあります。
今回の法制化によって、一定の具体例を示しながら、パワハラの定義が行われると思われます。
パワハラ法制化に関する予測
セクハラは男女雇用機会均等法により定義され、また防止するために企業が行うべき措置についても定められています。
おそらくパワハラも同じような対応がなされるのではないでしょうか。
パワハラの定義について
「あかるい職場応援団」という厚生労働省が制作したHPがあります。
こちはらパワハラを防止することを目的として製作されているHPですが、その中にパワハラは以下のように定義されています。
企業が求められる3つの措置について
男女雇用機会均等法で求められるセクハラ防止のための行動が企業に義務付けられるのではないでしょうか。
男女雇用機会均等法ではセクハラ防止のために大別して3つのアクションを求めています
パワハラ防止で大切な2つのこと
残念ですが、たとえ法制化されても、すぐにパワハラがなくなるとは思えません。
重要なことはいくつもありますが、その中でも特に大切と思われることを2つ挙げます。
①社内の『業務コミュニケーション能力』を上げる
コミュニケーションが大切だということは誰もがご賛同いただけると思いますが、では『業務コミュニケーション』という視点からはいかがでしょうか?
実際に各人のその能力には差があります。
業務コミュニケーションはノリのいい反応があるとかないとかではなく、業務遂行のために相手が正しく・速く理解をすることです。
当然、表現方法も含め、スキルとして認識する必要があると考えます。
②相談窓口の重要性
検討されているパワハラ法制においても、実際に発生した場合の相談窓口設置が定められると思われます。
社員が数千人規模に及ぶ大企業なら、相談者も気兼ねなく相談が窓口に出来ると思いますが、中堅規模の場合ですと、その後の影響を懸念して窓口に期待される機能を果たせないようになることが容易に想像できます。
そもそも、社員が社内の相談窓口のことをどれだけ信頼してくれるかも未知数です。
また、相談窓口の担当者においても様々な知識や調整が必要になるので、人事の業務負荷が増していく懸念があります。
まとめ
ニュース記事によると、法制化されることで業務上の指導に腰が引ける可能性があるため、法制化までは必要がないとの姿勢を取る企業もあるようです。
しかしながら、働ける人の数が減少傾向に入っているこの時代、就業環境を乱す原因は一つでもなくしていった方が全体の利益につながると考えるのですがいかがでしょうか。
業務上の必要な指導と、個人の尊厳を損ねる言動は決してイコールではありません。