障害者雇用の企業のメリット・デメリットって?調査結果から社労士が解説

「障害者雇用は義務だから…」という企業も多いのではないでしょうか?

少し古いですが、平成19年度中小企業における障害者の雇用の促進及び安定支援に関する研究調査でも、障害者を雇用する理由について、

・企業としての責任・義務50.8%

・法定雇用率を満たすため38.7%

・経営上のメリットがあるため2.1%

・その他2.7%

・無回答5.7%

という結果が出ています。

今回は、企業が障害者雇用を進める上で、調査結果を挙げながら、社労士視点でそのメリット・デメリットをお伝えします。

障害者雇用について

日本では企業に対して、従業員が45.5人以上いた場合に法律上雇用しなければならないという義務を課しています。

これをいわゆる「障害者雇用」と言っています。

障害があるかないかは、身体障害者手帳、療育手帳(知的障害)、精神障害者保健福祉手帳という3つの手帳のいずれかを所持しているかどうかです。

ですから、病気や障害があったとしても、手帳を所持していない場合は法律上の雇用義務がある障害者雇用に該当はしません。

この仕組みがあるということは、ある時期に調べたら手帳を所持していたのに、いつの間にか所持していないということが起こります。

とくに精神障害の場合は、障害の特性上、疾病と障害が併存していると考えるため、症状が軽快すれば手帳の要件に該当しないということも考えられます。

また、その他の障害も含めて、「自分は手帳を持たない」という選択をすることも可能です。

これはご本人が自分の人生を考えた時にはあり得ますし、決してマイナスなことでもないかもしれません。

障害者雇用に企業はどのように向き合うのか?

前述したように、障害者雇用が一定規模の企業に課せられた義務だとした場合、企業は雇用することに思考停止になって「義務だから雇用する」と考えるので良いのでしょうか?

私は「ノー」だと思います。何らかの大義をもって障害者雇用を進めることが望ましいと思います。

そして、その大義は「全体最適」に向かってもらいたいと思っています。

社会にとって必要だから法律上の義務があってもなくても雇用するという考え方が良いのではないでしょうか?

「それは理想論だ」「きれいごとだ」という方もいるかもしれません。

ある意味そうなのかもしれませんが、せっかくなら広い視野で考えてみたいところです。

通常雇用するのは、事業運営において雇用の必要性があるから、または雇用する意義があるから、必要な人材や魅力ある人を雇用するのではないでしょうか。

そうだとすると、それには病気や障害は関係ないのかもしれません。

ある部分は不得意でもある部分はとても能力が高い方もいます。

例えば数字を扱うのが得意、淡々とした業務が得意、ITに関連することが得意など様々です。

このように得意なことがあり、それが御社にとって戦力になりそうであれば、採用すべきです。

しかし、実際はなかなか障害がある方が雇用される機会は少ないです。

それはおそらく、メリットデメリットがあると感じているからでしょう。

ではどういうメリットデメリットがあるかを調査結果から考えてみましょう。

障害者雇用のメリットデメリット

障害者雇用の敷居が少し高くなる原因の一つが「定着がしづらい」ということでしょうか。精神障害を中心に整理してみたいと思います。

まずは以下の調査をご覧ください。

【出典】障害者雇用の現状等 平成29年9月20日 厚生労働省職業安定局

上記の調査で、離職の個人的な要因として一番多いのが、

「職場の雰囲気・人間関係」

次いで「賃金、労働条件」、「疲れやすく体力、意欲が続かなかった」、「仕事が合わない」などが挙げられます。

職場の雰囲気や人間関係については、もしかしたら周囲の方がどのように接したら良いかわからなくて、距離を置いたり、コミュニケーションを取るのに躊躇することもあったのではないかと想像しました。

賃金や労働条件は、業務内容が軽易なものや、業務時間の短縮、業務上配慮すべきことが多くなって、その分、賃金や労働条件を通常よりも下げてしまうこともあるのではないでしょうか。

そして体力に関しては、会社としても悩ましい問題であると思っているのではないでしょうか。

できる限りの配慮をして軽易な業務にしたとしても、それでも体力が続かないと感じられてしまっては、難しさを感じるのも無理もないことと思います。

障害者雇用を専門の一つにしている会社の調査でも、以下のように雇用の難しさが企業からは聞かれます。

「障害のある方を初めて雇用する前に不安に感じた点を教えてください(複数回答)」

・職場でのコミュニケーション 98社

・担当業務の切り出し/選定 73社

・障害理解 63社

・面談や相談員などの本人へのフォロー/配慮 61社

・業務レクチャー/研修手段 56社

・勤怠安定 53社、設備 29社

・評価方法 25社

・処遇 24社

・避難などの有事対応 21社

・金銭管理 4社

(引用:株式会社LITALICO「障害者雇用を行った企業担当者を対象にした調査を実施」)

会社としては、サポートや接し方の難しさ、離職をされてしまうことを考えると躊躇してしまうことも多いように思います。

しかし、メリットもあると思います。

すでに日本では好事例がたくさん出ています。

独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構において、毎年度各企業の取り組みから最優秀賞、優秀賞などを発表しています。

そこにある好事例を見ていると、雇用するメリットが見られます。

ある会社では、障害者の方の仕事をつくりだすことで、障害のある社員それぞれに適した仕事による職務創出につながって、販売担当者の負担が軽減したことにより、販売の効率性が向上したという事例も出ています。

私としては、直接的なメリットだけではなく、間接的なメリットもあると思っています。

例えば障害者雇用を促進することで、サポート体制を構築するわけですから、それはメンタルヘルス不調のサポートに応用できます。

そして、サポートをするムードが醸成されることで、社内の雰囲気が良くなることもあるのではないでしょうか。色々と副次的な効果はあると思っています。

事例としてのメリットや効果は以下のホームページからもご覧いただけますので、ぜひご覧ください。

【引用】独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構ホームページ

さいごに

各社、色々な考え方があると思います。

人口が減少する中、手帳を所持している方が増えているという現状がある日本においては、障害のある方を雇用するというのは法定雇用率の上昇に備えるという受け身な態度ではなく、人材確保という戦略的に見ていけると良いと思います。

脊尾 大雅

社労士

秋葉原社会保険労務士事務所 代表 >>HPはこちら

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