障害者雇用と働き方改革…治療と職業生活の両立支援の要点とは?

2018年6月に可決された働き方改革法は、労働基準法をはじめとした各種法律の改正により、労働者の働き方をより良くすることを目指したものです。

この法律では、

・長時間労働の抑制(長時間労働の上限規制)

・働き方の自由度を高める施策(高度プロフェッショナル制度、フレックスタイム制度の清算期間の緩和など)

があります。

これらは個人の生活と仕事のバランスを取る、または個人に自由に委ねる方向性だと考えられます。

このように、枠組みとして働き方の自由度を増していく流れが日本にありますが、病気を抱えている方に対してもう一歩踏み込んだ動きもあり、それが「治療と職業生活の両立支援」(以下、両立支援)というものです。

以下、現在の両立支援の動きの中から言われていることを取り上げてみましょう。

【関連記事】

>>働き方改革のメリット・デメリットって?人事視点で社労士が解説

治療と職業生活の両立支援のポイント(抜粋)

『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』(以下、ガイドライン)では、「企業において疾病を理由に1ヶ月以上連続して休業している従業員がいる企業割合」が、以下の通りです。

・メンタルヘルス 38%

・ガン 21%

・脳血管疾患 12%

平成22年国民生活基礎調査によると、仕事を持ちながらガンで通院している方の数は32.5万人という結果があり、この問題に対して両立を支援しようという機運が高まってきたようです。

治療と就労に関する両立支援は、現在は糖尿病や脳卒中、メンタルヘルスにも広がっています。

労働者本人の申出

ガイドラインでは、両立支援の留意点としていくつかあげており、その中の一つに「労働者本人の申出」という項目があります。

ここには、

「私傷病である疾病に関わるものであることから、労働者本人から支援を求める申出がなされたことを端緒に取り組むことが基本になること」

と記載されています。

ここは非常に重要な点であると私は考えます。

なぜなら、会社はその方の人生の主体者ではなく、あくまで補助者です。

病気を持ちながらどのように生きていくかは本人が決めることです。

だからここでは、本人の想いを尊重する姿勢が必要です。

しかし会社は「何かあったらどうするんだ?」と思うかもしれません。

会社には労働契約法第5条の安全配慮義務がありますから、よほどの状態があれば対処が求められるため、結局は会社が関与しなければなりません。

したがって、いずれにしても会社は関与するわけですから、心配していることや気がかりであること、支援する用意があることが伝われば、どのような支援を求めるかは本人が発信する方が良いということになります。

周囲の者への対応

そして、治療に対する配慮の検討として、「周囲の者への対応」という項目があります。

「周囲の方には一時的に負荷がかかることから必要な情報を限定した上で、負荷がかかる同僚や上司等には可能な限り情報を開示した理解を得るとともに負担がかからないようにすること」

と記載されています。

確かにここも非常に重要で、周囲の方にかかる負荷を置き去りにしてしまっては、今後は過重労働で周囲の方が体調不良になることが予想されます。

そうすると、がんで治療が必要な方も罪悪感を感じるでしょうし、誰も幸せになりません。

具体的な方法は限られるかもしれませんが、全労働者で何ができるかを考えてみるのも良いかもしれません。

働くことと生きることの狭間で会社ができること

「何のために働くのですか?」という質問をされた時に皆さんはどのように答えますか?

お金を稼ぐため、仕事が楽しいから、自分を成長させたいからなど、様々あると思います。

仕事をするというのは生きることでありますから、それはいわゆるキャリアという視点で語られる分野なのだろうと思います。

ドナルド・E・スーパーは、キャリアというものの定義を以下のように言っています。

「生涯を通じた自己概念の発達と実現の持続的なプロセスであり、自己概念を現実に対して検証し、それにより自己を満足すると同時に、社会に有益となるものである」

(引用:キャリア開発と統合的ライフ・プランニング)

私はこの分野の専門家ではないですが、メンタルヘルスや労務の専門家としての視点からすると、人生と職業が一体化されており、それについては分離して考えるのではなく統合して考えるということが必要です。

企業はそれに対してどのような環境を提示し、当事者以外の社員はどのような協力ができるかによって一社員の人生が豊かになると考えます。

ストレスチェック制度の活用のススメ

スーパーの定義からも私はストレスチェック制度はキャリア支援の側面があると考えます。

毎年一回、自分の心身の状態をチェックしつつ、それによって自分がどういう方向性に進みたいのかを検討する。

そしてそれが満足いく形を目指し、社会にとって有益な形になればなお良い、という流れです。

ストレスチェックにおける質問項目は、まさにその時点で自分が置かれている状況や気持ちを表すものですから、うってつけの機会です。

病気のある方がストレスチェック制度を通じて自分の人生を考えるのも当然の流れです。

1.現時点でやれること、やれないことを知る

2.やりたいこと、ありたい自分を知る

3.そのために何をしたら良いのかを考える、またはそのための技術を学ぶ

などができれば、その人は自己の人生に満足感を得やすいのではないでしょうか。

この流れに病気や障害は関係ありません。

障害や疾病の特性上配慮が必要かもしれませんが、それはあくまでサブとしての関わりです。

メインは「自身がどのように生きていくか」を考えることです。

会社をそれを肯定的な態度で支援をすれば良いのです。

さいごに

病気や障害を個性と捉える傾向がありますが、それは本人の解釈の仕方であり、そうではない方はあくまで差別を取り除くための啓発的な意味合いを超えたものであってはならないと私は考えています。

両立支援とは周囲の配慮(特に企業)のあり方として重要テーマであるが、両立することを本人に求めたものではないことを理解しておきたい。

どのような生活をするかは本人の選択です。

企業ができることは、様々な状況を抱えた本人が、自身にとってより望ましい人生になるための選択肢を用意することではないでしょうか。

一歩踏み込んだ制度設計に企業は挑戦していただきたいです。

脊尾 大雅

社労士

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