定着率や生産性向上のために、従業員満足度調査を実施する企業は近年増加傾向にあります。
それに伴い、様々な調査会社が独自のパッケージで企業に売り込みをかけています。
従業員満足度調査は、主に紙面アンケート・Webアンケート・面談などで実施されます。
社外の調査会社へ依頼する場合は、紙面やWebのアンケートと深堀分析がセットになったプランや、結果に基づいた人事システムなどのソリューションが一体となったプランなどが一般的です。
一方、費用面を考えて人事面談などを実施し、自社完結する企業もありますが、対面では思っていることを口にできない従業員も多いうえ、担当者の属人的な判断が加わるためお勧めできません。
面談はアンケートとその分析結果を踏まえて、補完的に実施することが望ましいでしょう。
今回は、従業員満足度調査の基本となるアンケートの要素や指標について解説していきたいと思います。
従業員アンケートの3大要素
従業員満足度は大きく分けて、
「働く環境」
「仕事のやりがい」
「会社への愛着」
の3要素からならり立っています。
従業員満足度アンケートはそれぞれの要素を細分化した質問を5段階評価で回答し、属性と合わせて分析していきます。
働く環境に関する6つの質問
①職場の人間関係は良好か
(良好・やや良好・普通・あまり良好ではない・悪い)
②給与、待遇に納得しているか
(納得している・やや納得している・どちらでもない・あまり納得していない・納得していない)
③残業時間や出勤日数に不満はないか
(不満はない・あまり不満はない・どちらでもない・やや不満・不満)
④職場の設備面に問題はないか
(全く問題ない・目立った問題はない・どちらでもない・やや問題がある・大いに問題がある)
⑤福利厚生に満足しているか
(満足・ほぼ満足・どちらでもない・やや不満・不満)
⑥※「あなたが働く環境を5段階で評価してください」
(良好・やや良好・普通・やや不良・不良)
この設問では「衛生要因」と呼ばれる不満足要素を調査することができます。
不満足要素は従業員満足度を上げる直接的な要素ではありませんが、離職率が高い企業は不満足要素を改善することで離職に歯止めをかけることができます。
仕事のやりがいに関する6つの質問
⑦現在の職務は自分に向いているか
(向いている・やや向いている・どちらでもない・あまり向いていない・向いていない)
⑧現在の職務は自身の成長につながっていると思うか
(そう思う・ややそう思う・どちらでもない・あまりそう思わない・そう思わない)
⑨上司から適切なフィードバックは得られているか
(十分得られている・ほぼ得られている・どちらでもない・あまり得られていない・全く得られていない)
⑩評価制度は適切か
(適切である・ほぼ適切である・どちらでもない・あまり適切ではない・全く適切ではない)
⑪自分の能力は発揮できているか
(十分発揮できている・ほぼ発揮できている・どちらでもない・あまり発揮できていない・全く発揮できていない)
⑫※「あなたの仕事のやりがいを5段階で評価してください」
(おおいにやりがいを感じる・やりがいを感じる・どちらでもない・あまりやりがいを感じない・全くやりがいを感じない)
この設問では、「動機付け要因」と呼ばれる満足要素を調査します。
達成感・承認されることの喜び・成長欲求などの満足要素を上げることが従業員満足度を上げるための直接的なアプローチとなります。
会社への愛着に関する4つの質問
⑬会社の経営方針に共感できるか
(共感できる・ほぼ共感できる・どちらでもない・あまり共感できない・全く共感できない)
⑭会社の業績に満足しているか
(満足・ほぼ満足・どちらでもない・やや不満・不満)
⑮会社は風通しがよいと感じるか
(そう感じる・ややそう感じる・どちらでもない・あまりそう感じない・そう感じない)
⑯※会社を誇りに思うか
(とても誇りに思う・誇りに思う・どちらでもない・あまり誇りに思わない・全く誇りに思わない)
この設問は企業へのロイヤリティの調査です。ロイヤリティは従業員満足度の要素ではありませんが、従業員満足度が高くてもロイヤリティが低いことは十分にあり得ます。
ロイヤリティは生産性の向上や企業の長期的な発展に影響する重要な要素ですので併せて調査しておくと便利です。
アンケートの指標について
アンケートは5段階回答で実施するため、回答者は正直な気持ちが書きやすく、相関関係もみやすくなります。
前述の質問例(全16問)のうち、※印のついている⑥⑫⑯の質問と、その前の質問(設問1.2は5問、設問3.は4問)は相関関係にあります。
例)設問1の回答例
①職場の人間関係は良好か(やや良好)
②給与、待遇に納得しているか(どちらでもない)
③残業時間や出勤日数に不満はないか(あまり不満はない)
④職場の設備面に問題はないか(やや問題がある)
⑤福利厚生に満足しているか(やや不満)
⑥※「あなたが働く環境を5段階で評価してください」(やや不良)
この場合、①と③は5段階評価の上から2番目の評価、④と⑤が下から2番目の評価ですが、総合評価である⑥の評価が下から2番目の「やや不良」という評価となっています。
不満要素のほうが強く、中でも④の設備面、⑤の福利厚生面の不満要素と相関しているというように読み取れます。
逆に、⑥の評価が「やや良好」であれば、①の人間関係、③の残業時間と相関して満足要素を強く感じているということになります。
このように、従業員満足度アンケートでは、各設問ごとの総合評価が指標となり、相関する項目をピックアップして自社の問題点を見出し、有効な対策を講じるというサイクルを回していくことが重要です。
「eNPS」について
最後に最近よく耳にする「eNPS」という言葉について解説します。
eNPSは「employee Net Promoter Score」は、顧客満足度調査に用いられる手法を従業員に対して行うもので、近年従業員満足度調査と合わせて実施することが多い項目です。
従業員が自社をどのように評価しているかを可視化する調査であり、11段階のいたってシンプルな質問です。
「あなたは自社への入社を家族や友人にどの程度薦めたいですか?」
(全く思わない0・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10非常に薦めたい)
回答は、
・0~6が「批判者」
・7~8が「中立者」
・9~10が「推奨者」
となり、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値が「eNPS」ということになります。
この項目は単独でも調査できますが、従業員満足度アンケートと同時に調べることにより、回答の相互関係から自社の課題をより明確化することができますのでお勧めです。