【両立支援】発症から復職まで。支援に潜むバグとギャップ【看護師の視点から】

「一般社団法人ともに」では治療と仕事の両立支援の中でも、メンタルヘルスにスポットライトを当てて、

・産業医
・社労士
・弁護士
・精神科看護師
・ソーシャルワーカー
・人事部マネージャー
・患者

といった幅広い視点から、両立支援のあり方について発信されています。

今回は、看護師として精神科勤務の後、難病患者の就労に携わってこられた中金竜次氏。

発病から復職までの流れと、支援に潜むバグとギャップについてお話しいただきました。

中金竜次氏
看護師。難病患者の就労支援ネットワーク ONE 代表・難病患者就労支援ネットワークコーディネーター。これまで精神科・療育医療・リワーク支援、企業での医療相談に携わり、H25年神奈川県の神奈川労働局、難病患者就職サポーターに就任。神奈川県両立支援推進チーム・難病研究班、西澤班にて、難病患者の就活ガイドブックの作成に参加。年間1000件程の難病患者の就労相談を受けている

【第1回協議会の様子はこちら】
>>【メンタルヘルスと両立支援】多職種の視点からみる職場のワーストプラクティス事例
>> 【治療と仕事の両立支援】メンタル不調者の「働く」を支える社労士の視点

立場の違いから生じる支援のギャップとバグ

これまで、訪問看護やハローワーク等で相談を受けていたときは、年間1000件ほどのご相談を受けてきました。

そこでよく、難病患者の方々から「会社が悪い」という声が聞こえてきたんです。

「会社ってそんなに悪いやつなんだ」と思う一方、「本当かな?」とちょっと疑ってもいたので、直接とある会社に聞いてみることにしました。

そうしたら「いやいや、うちは働いてもらえたらいいですよ。働けるんですか?」と逆に聞かれてしまったんですね。

ケースバイケースではありますが、たしかに病状説明を含めた医師の意見書などの書類を“働けるアピール”として提示し、再現性が担保できると判断されれば、基本的に採用に至ると考えています。

一方、当事者としては復職しないと生活できない段階になれば、当然焦りが出てきます。

1つのレールに乗ってきた人間が、今さらレールの外を見るのはなかなか難しいものがあります。

ここで心理的な視野狭窄状況が出てきます。

この状況は抑うつに繋がり、セロトニンも減っていきます。これは人の性格ではなくて状態

このような例からも、それぞれの立場、見識、情報の違いが交錯して、支援におけるギャップやバグを生み出しているように感じています。

発症から復職後のギャップ


これは、発症から復職後までを【症状悪化】【療養】【就労準備】【復職・復帰】【定着】という流れでまとめた図になります。

縦軸では重症度を示していて、下にいくほど症状が重くなっています。

図中、オレンジ色の線は比較的軽度の方、青い線は比較的重度の方の発症から復職までの流れを示しています。

【症状悪化期・療養期】受診へのためらい

【就労準備期】3つのリワーク

【復職・定着期】職場復帰支援と復職のタイミング


働く力と会社が求めるレベルのギャップ


もともとは働く力があった方でも、症状が悪化し、一度働く力が落ちてしまうと、すぐに元通りの働く力が戻るわけではありません。

例えば、図中Cの就労準備期に焦って復帰すると、働く力のバッテリーに十分でないのに、負荷がかかりすぎてすぐにショートしてしまいます。

「働く力のバッテリーがこれだけ小さくなっているのに、大きな負荷をかけようとしていませんか?」という冷静な視点が、それぞれの立場で必要です。

そこで合理的配慮をどれくらい調整できるかが重要になってきます。

合理的配慮に関しては、厚生労働省が経営状況や企業規模の要件に関して示しています。

いずれにしても「今、どれくらい働く力を充電をできているのか」というイメージは意識したいところです。

復職にあたって、実践のシュミレーションができるリワークや障害者医療センターの職業評価を活用して、働く力の充電状況を想像していくのも良いと考えます。


仕事からのブランクに関して、健康の定義と同じように、身体的、社会的、精神的の3つに分けてみました。

健康とは、完全な 肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。
引用:世界保健機関(WHO)憲章

休職された方の場合、皆さん口々に「人と話す機会が減った」と言います。社会との関係が切れていくんですね。

薬の影響も含めて、認知機能の問題もあるかもしれません。

人と話す機会がある程度ないと、人との距離感を適切に保つことが難しくなります。

身体的ブランクでは、ただ通勤できるかだけではなく、他の方とコミュニケーションをとれるかなど、社会的な関係を築く体力があるかも大切なポイントです。

リアルな状況のなかで対話をするということは、思っている以上に脳をしっかり使います。

ですから、復職サポートの場面では、まず1:1でちゃんとコミュニケーションをとることが大切になります。

課題に対して取り組めること


メンタル疾患患者の方が増加している要因はいくつかあります。

それに対して、働き方の見直し・治療への適切な認識・業務量や業務内容の調整・相談などの支援体制など、色々取り組めることがあると思います。

復職までの一連のプロセスをサポートさせていただいた方に、「中金さん、もう1人の自分を見つけたの」と言われてちょっとドキッとしたことがありました。

どういう意味かと心配に思ったんですけど、その方は「ご飯が前よりうまくなった」と仰っていて安心した記憶があります。

大切なことは、限局的な支援ではなく、症状悪化から復職・定着までの一連のプロセスを捉えた上で、復職・復帰に向けた支援のあり方が求められていると考えています。

・どのように復職・転職していくのが良いのか
・どういう方向にキャリアチェンジできるのか

を一緒に探りながらサポートすることで、新しいスタート地点にたどり着きやすくなるのではないでしょうか。

<参考文献>

【第1回協議会の様子はこちら】
>>【メンタルヘルスと両立支援】多職種の視点からみる職場のワーストプラクティス事例
>> 【治療と仕事の両立支援】メンタル不調者の「働く」を支える社労士の視点

中金竜次

看護師

難病患者の就労支援ネットワークONE代表・難病患者就労支援ネットワークコーディネーター

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