【両立支援】患者を支える「対話」のあり方とは?【産業医の視点から】

厚生労働省の掲げる「治療と仕事の両立」。「一般社団法人ともに」では、その中でも、メンタルヘルスにスポットライトを当てて、

・産業医
・社労士
・弁護士
・精神科看護師
・ソーシャルワーカー
・人事部マネージャー
・患者

といった幅広い視点から、両立支援のあり方について発信されています。

今回は、北里大学医学部公衆衛生学の講師であり、医学博士・産業医の江口尚氏。

中小企業、外資系企業などの産業医として現場の課題に向き合ってきたご経験なども踏まえながら、両立支援の考え方と課題についてお話しいただきました。

【関連記事】
>>【両立支援】発症から復職まで。支援に潜むバグとギャップ【看護師の視点から】
>>【メンタルヘルスと両立支援】多職種の視点からみる職場のワーストプラクティス事例
>> 【治療と仕事の両立支援】メンタル不調者の「働く」を支える社労士の視点


簡単ではない患者の意思決定を支えるには?

両立支援の対象にはガンや難病など、様々な病気があります。

また、患者さんの中でも「余命半年」と告げられた患者が3年以上生きていたりと、将来の確かなことは誰にもわかりませんし、個人差もあります。

そのため、両立支援を進めていく上で「不確実性」がキーワードになります。

この不確実性があるからこそ、関係者同士での「対話」を経て、ご本人に意思決定をしてもらうことが大切になります。

もちろん、意思決定は決して簡単なことではありません。

患者さん自身も意思決定に慣れているわけではないですから、「先生だったらどうしますか?」とよく聞かれます。

患者さん自身が複数の選択肢の中から、しっかりと考えて悩むことが大切ですが、患者さん本人が自分で自分の思いに気付くことは難しいものがあります。

そこに支援者の大切な役割があります。

人と話をしたり、支援者との相互作用のなかで自分の意向が固まることもあります。そのため、様々な専門職が寄り添って意思決定を支える体制や対話がポイントになります。

こういった両立支援への考え方をどのように中小企業に浸透させていただくかも大事になります。

いわゆるブラック企業というわけではないのですが、悪意なく「仕事より治療」と思う経営者さんはまだまだいます。

そのため、「病気で本当に働けるのか」「仕事よりもまず治療だろう」という企業側の不安解消につながる情報を提示していくことも両立支援を進める上で欠かせません。

第三者の立場から状況の整理を

自分の症状や「どういう仕事ならできるのか」を初めから説明できる人はほとんどいません。

また、自分に必要な配慮を会社に対して申し出る際、「配慮してください」と職場や上司に言うのは心理的にハードルが高いですよね。

上司が変わるたびに自分の症状や配慮事項を説明するのが大変だという人もいます。

様々な病気がありますが、外から見るだけではわからないこともあります。

例えば、よくある症状として「だるい」「痛い」がありますが、健常者から見ると「怠け」にしか見えないことがあります。「昨日は元気だったのに今日は来れない」ということもあります。

そこで、産業保健師などの支援者が第三者の立場から状況を整理し、適切なコミュニケーションにつなげれば、本人の気持ちも楽ですよね。

より専門的な立場から言ってもらうことで上司も受け入れやすくなるのではないでしょうか。

両立支援は事業者が進めるもの

厚生労働省の『事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン』の主語は基本的に事業者です。

ただ実際は、当事者がまずどこに相談していいか分からないことが多いので、かかりつけの医療機関から本人を通して企業側に働きかけて両立支援を始めていくケースが多くあります。

そのため、企業側の「両立支援は病院がやるもの」という誤解を招きやすくなり、両立支援の仕組みがうまく働かなくなることもあります。

大前提として、両立支援は、あくまで事業主が進めることに対して医療機関が協力しているという仕組みという理解が必要になります。

社会的支援・仕事の裁量が高い職場は患者を受け入れやすい

50人以上の職場では、年1回のストレスチェックを義務づけられています。

これにより、その職場でどれくらい同僚や上司が支援しているのかや、仕事の裁量度・仕事量などを評価できるようになっています。

上の図に挙げた調査では、職場の社会的支援が低いと思っている人ほどガン患者を受け入れられないと答えています。

仕事の裁量についても同じで、ガンだけではなくメンタルヘルスや難病でも同じ結果でした。

ただ、仕事の量については差が見られませんでした。

なんとなく仕事の量が多いほど、受け入れられないかなという印象がありますが、そうではありませんでした。

これらは現実にある多くの要因の中から選んだ3つでしかありませんが、職場環境を判断するひとつの判断材料になります。

両立支援の現状

慢性疾患は治療と仕事の両立が目標

復職後の経過と課題

復職は基本的にはフルタイムで戻れるかが重要ですが、難病の場合だと右肩下がりに就業継続能力がなっていきます。

復職はあくまでスタート地点であり、復職前の段階で、本人に復職の条件をしっかり伝えておくことが大切です。

会社はリハビリをする場所ではなく働く場所なので、あまりにも会社が期待する就業能力を下回っていると、職場復帰や定着が難しくなります。

多くの会社は難病だからクビにするということはありません。休職期間の満了までは復職の可否について様子を見ています。

就業継続能力が右肩下がりになる場合、状況に応じて、雇用形態の見直しの判断が必要になりますし、就労が難しい場合は、就労移行支援事業所をはじめとする、地域の支援機関の活用も視野に入れる必要があります。

会社に戻るという選択肢だけではなく、就労に関する支援機関につないでいくことも含めて、本人と「対話」していくことやはり大切ではないでしょうか。


患者視点で考えるポイント

【関連記事】
>>【両立支援】発症から復職まで。支援に潜むバグとギャップ【看護師の視点から】
>>【メンタルヘルスと両立支援】多職種の視点からみる職場のワーストプラクティス事例
>> 【治療と仕事の両立支援】メンタル不調者の「働く」を支える社労士の視点

江口尚

産業医

北里大学医学部 公衆衛生学 講師 医学博士

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年12月11日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。
採用・人材育成・組織強化に効く!
約300社での人事ノウハウ集をプレゼント

【無料】人材採用・育成・組織強化ガイドブック

「知名度がなくても、採用は成功できる」をキーワードに実践してきた、約300社での人事コンサルティングでのノウハウを1つの小冊子にまとめました。
(全59ページ)

【内容 ※一部抜粋】
・最高の採用につなげるための会社基盤の整え方
・会社認知度を上げて人材を集めるには
・真の人材を見抜く3つのポイント
・離職原因を分析し、採用ミスマッチを防ぐには

関連記事

こちらもおすすめ

  1. 20.02.15
    【両立支援】若年性認知症就労支援から第二の人生の伴走まで【協議会レポ】 両立支援

  2. 20.02.04
    【治療と仕事の両立】元難病患者就職サポーターと難病当事者でクロストーク 両立支援

  3. 20.02.15
    【両立支援】患者視点から目指す患者協働の医療の姿とは?【協議会レポ】 両立支援

  4. 19.11.13
    【メンタルヘルスと両立支援】多職種の視点からみる職場のワーストプラクティス事例 両立支援

  5. 19.11.13
    【治療と仕事の両立支援】メンタル不調者の「働く」を支える社労士の視点 両立支援

  6. 19.11.30
    【両立支援】発症から復職まで。支援に潜むバグとギャップ【看護師の視点から】 両立支援

Menu