【両立支援】若年性認知症就労支援から第二の人生の伴走まで【協議会レポ】

治療と仕事の両立支援のあり方を多職種メンバーで意見交換をおこなう、協働支援研究協議会の第3回。

今回は、若年性認知症の方の支援を主におこなっている、名古屋市認知症相談支援センターの鬼頭史樹さんにお話しいただきました。


若年性認知症の社会的特徴とは?

若年性認知症は、MRI検査でも脳の萎縮が見られないことが多く、初期の診断が難しいとされています。

仕事上のミス(お客さんとの約束や大事な会議を忘れてしまう、発注数を間違えてしまうなど)をきっかけに若年性認知症であることがわかる人もいます。

脳血流検査等で詳しい検査をすれば診断が可能なこともありますが、そういった検査が可能な病院も少ないのが現状です。

さらに、診断後にも課題はあります。

障害者福祉の窓口に行くと「認知症は高齢者福祉」と断られ、高齢者福祉の窓口に行くと「65歳以上が対象」と断られてしまう…といったケースもしばしば。

このように、若年性認知症は高齢者福祉と障害者福祉の狭間になる問題が起こっています。

若年性認知症:就労の現状

若年性認知症の人のうち、7割以上の人が仕事を失って経済的に不利な状況に陥っている現状があります。

仕事を継続するための就労の支援が大切ですが、認知症の原因疾患の多くは進行性であり、仕事がうまくできないことが徐々に増えていくことも現実です。

“認知症は進行性である”ことは頭では理解しているけれど、いざその現実を目の前にすると、本人や家族もやはりショックを受けてしまう方は多いです。

また、周りでサポートをしている上司や同僚、さらには支援者も無力感を感じてしまうことがあります。

認知症についての正しい情報をしっかり共有していくことや、業務上においても、症状の進行に合わせて新たな工夫をしていくことや目標を変更していくが大切です。

また、退職後の“第二の人生”に向けて、生活面でも精神面でも準備をしていくこと(ソフトランディング)が大切だと痛感しています。

診断後や退職後に、社会とのつながりが薄れ、閉じこもりがちになるなど社会的に孤立してしまう「空白の期間」の存在が大きな課題になっています。

この間にも本人の症状は進行し、家族も疲弊しきってしまう。

それからようやく福祉サービスの利用を開始することが多く、支援につながるまでの「空白の期間」をいかに縮めるかが重要です。


「安心」をうむ環境作りの実践

これは認知症の人に限らずですが、知っている人と楽しいことをしている時はとても安心できますよね。

障害特性から不安を感じることが多い認知症の人にとって、安心感はとても大切だし、安心感のある環境をつくることが合理的配慮になります。

地域や社会の中で、人とのつながりの中で当たり前に安心できる環境を作っていく必要があります。

先日、とある認知症の人とお会いしてきました。

その人とは5年来の付き合いになりますが、最近では認知症も重度まで進行し、言葉もほとんど出ません。

現在は特別養護老人ホームに入所しています。

それでも久しぶりに会うと、ニコニコと迎え入れてくれます。

実はその人、(昔から)女性が好きで男性嫌いだったため、施設の男性職員はその方人と良好な関係を築くのに苦戦していました。

そんな人だったので、「なぜ鬼頭さんはそんなに仲良く出来るのか」と聞かれたのですが、答えは簡単で「前から仲が良かったから」です。

特別なことが必要なわけではないんです。

できるだけ早い段階で、地域でどれだけ良い関係を作っていおけるか。これが認知症が進行したとしても自分らしく生活していけるかという点でとても大切になってくると私は思います。

「〇〇したい」を実現しよう、という取り組みも積極的に行っています。

「野球がしたい」という認知症の人がいたので、近くの中学校の野球部の子どもたちとソフトボール交流をしたことがありました。

認知症の人は、投げる打つなどの基本的な動作はできますが、打った後どこに進めばいいのかわからなくなることがあります。

当事者と中学生が「どうやったら一緒に楽しく野球ができるのか」をワークショップでともに考え、1塁と書いた看板を持ったり、進行方向がわかるように大きな矢印を地面に書いたりする新しいアイデアのルールが誕生しました。

このグラウンドのデザインを見ると、専門家が集まって作ったわけではなく、野球が好きな当事者と子どもたちが出会うことで生まれた、合理的配慮が詰まったデザインと言えます。

子どもたちは最初、認知症に対して「怖い」というイメージを持っていました。

でも当事者とコミュニケーションをとっていくうちに、「なんだ、僕たちと同じ野球好きの人じゃないか」とすぐに打ち解けて、交流後にも「楽しかった!」と嬉しそうに話していました。

当事者も、「(記憶障害があるけれども)この日の事は絶対に忘れない」と話していたことが印象的でした。

支援者の立場として、ときに「認知症の人が何に困っているのか」を聞かれることがありますが、そう聞かれても正直困ってしまうことがあります。

答えは、支援者の中にあるわけではなく、当事者に何がやりたいかを聞いて、そのやりたいことを一緒にやっていく中で学び合い、気づいていくものなんです。

認知症は症状が進行していく中で、ずっと同じ居場所には居られなくなります。それを無理やり、居させようとすると問題が悪化してしまいます。

一方で、その人の進行状況にあった居場所は必ずありますし、もしなければ作っていくことが大切です。

進行性であるからこそ、居着いてしまうことを前提とする“居場所”ではなく、次の人にバトンを渡していく“場”をつくる

このことを今後も実践していくことが大事だと考えています。

鬼頭史樹

社会福祉士

名古屋市社会福祉協議会・名古屋市認知症相談支援センター・若年性認知症支援コーディネーター

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2020年2月15日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。
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