パワハラの定義・チェック項目・事例・リスクを社労士が解説

パワーハラスメントがここ数年で大きな社会問題になってきています。

厚生労働省の調査では企業の82.1%はパワハラ対策を経営上の重要課題としてとらえ、社内相談窓口を持つ企業では相談トップはパワハラ関係で占められていました。

また行政機関への相談件数でも、70,917件と非常に多くの相談が寄せられており、毎年増加しています。

そもそもパワハラの定義や意味って?

平成はじめの頃、パワハラという言葉はまだありませんでした。

「パワーハラスメント」「パワハラ」は和製英語ですので辞書・辞典から調べてみましたが、

・1979年の国語辞典(岩波書店)には掲載なし。

・1998年の広辞苑(岩波書店)にも掲載なし。

どうやら使われ始めたのは、比較的新しいようです。ちなみに英和辞典ですと、

‟Harassment“=嫌がらせ 、反復攻撃となっています。

厚生労働省によるパワハラの定義

現在、厚生労働省では以下のように定義づけしています。

「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。」

短くまとめてしまうと、「職場における権力を使ったしつこい嫌がらせ」、ということでになります。

パワハラのチェック項目

その行為がパワハラかどうかは、実は判定が難しい面があります。

意外に思われるかもしれませんが、パワハラを直接規制する法律は現在なく、法制化された定義はありません。

それでも現在、過去の裁判などを参考にして、代表例6つを厚生労働省が発表しています。

パワハラの6つの代表例

①身体的攻撃

暴力的行為。段ボール等で突然たたかれる、ネクタイを引っ張られる、0℃前後の部屋で仕事をさせる。すぐにパワハラとわかりやすいパターンです。

②精神的攻撃

職場や取引先の前で罵倒したり、「婆さん!」「姉ちゃん!」といった俗称で、威圧的な話し方をして精神的に追い詰める。

③人間関係からの切り離し

回覧や忘年会等の案内をしない。座席を遠ざけて隔離。

④過大な要求

業務不慣れな社員に対して、通常業務では処理しきれないような業務を与える。

⑤過小な要求

一日中、草むしりや書類のシュレッダー作業等の単純作業を延々とさせる。

⑥個の侵害

立場を利用して勝手に私物(携帯電話や手帳等)を覗く、執拗に交友関係やプライバシーに立ち入ってくる。

セクハラの場合は?

一方、セクハラの場合、男女雇用機会均等法で明確に定義されており、この法対応の違いが悩みの種になります。

例えば、セクハラは男女雇用機会均等法で会社が防止のために必ず対応しなければならない措置が明確に定められています。

つまり、セクハラを受けた⇒会社が法に定める措置をしていない=「法違反」となり、行政指導が入ることが可能です。

ところが、「パワハラされた!」と行政機関に相談に行っても、どの法律に違反しているという根拠が希薄で、行政指導が難しい面もあります。

パワハラ防止のために、会社がしなければならないことも明確に定められておらず、パワハラの判定には非常に難しいものがあります。

三方みな損…パワハラのリスク

パワハラの判定が難しいからと言って、パワハラ行為が許されるわけはありません。

以下に、3つの観点からパワハラのリスクをまとめました。

<被害者>

前述した6つのような行為を毎日されたら、たまったものではありません。反復攻撃により、能力が発揮できないばかりか、心身不調になりメンタルヘルス疾患にかかる可能性や、中には自死を選ぶ人も出てきます。

<加害者>

教育的指導と言うかもしれませんが、限度を超えた「指導」は刑法や民法によって、個人的に責任・賠償を問われる可能性があります。実際に裁判で賠償を命じる判決もあります。そこまでいかなくても、社内での降格や解雇も十分にありえます。

<会社>

パワハラが日常的に起きている会社では退職者も多くなる傾向があり、社員のモチベーションも上がりません。生産性だけでなく、訴訟になれば使用者責任も問われ、賠償金を命じられる可能性もあります。

自分自身を守るために

パワハラは誰も得しない行為ですが、それでも現実に発生している以上、自身を守るための行動手段をご紹介します。

NOと言う意志表示

一定限度を超えた嫌がらせ行為に対して、それを我慢し続けると、あなたの心身が先に潰れてしまいます。

加害者本人に対して、行為をやめるように言うことが最初のステップですし、それでも止まなければ上司、人事部、行政機関と相談相手を広げていくことが重要です。

法律による守り

裁判では行為者への裁判での民事上の損害賠償、刑法による制裁があり、またパワハラでメンタル疾患になった場合は、労災認定されているケースもあります。

他には、都道府県労働局による総合労働相談やあっせんによって和解を促す制度もあります。

パワハラによる会社の5つのリスク

パワハラは、企業にとって潜在的リスクであるということを認識して、発生防止の措置を講ずる必要があります。

訴訟リスクを提起する記事も多いですが、もっと足元を見据えた場合、

・会社の生産性が下がる

・従業員の早期退職が増える

・新規社員の応募がなくなる

・被害者と退職理由をめぐってもめる

・会社都合退職とハローワークが認定すると、助成金受給が出来なくなる可能性もある

等々、良いことは何もありません。

また、社内でパワハラが発生していることを顧客やメインバンクに知られたら、どうなりますでしょうか?

会社のコンプライアンス意識を疑われてしまうのではないでしょうか?

まとめ

「生活習慣病」というものがあります。これは日常の不摂生が積み重なって高血圧性疾患や脳・心疾患などに至っていく病気です。

ハラスメントを例えてみると、最初は些細な言動であったが、放置していたらパワハラになり、影響は職場各方面にわたり、訴訟リスクまで行きつくことから、「職場習慣病」と言っても良いかもしれません。

現状の法制度では、パワハラに明確な定義がないと述べましたが、だからと言って我慢する必要はなく、執拗に嫌がらせを受けている場合は、声をあげてNOと言い、改善を要求する事が重要です。

なお、パワハラが身体的攻撃やセクハラを含んでいる、長時間労働など、明らかな法違反や証拠があると、被害者側の主張が認められやすい傾向もあります。

この点を経営者、管理職の方々は深くご認識いただき、発生の防止に努めていただく必要がございます。

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吉村和也

社労士

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