パワハラ対策に録音は効果的?5つの注意点を社労士が解説

パワハラは認定が非常に難しいことをこれまでのコラムでもご案内していますが、証拠があるとどうなるでしょうか。

少し前、車中で絶叫する国会議員の録音や、ドライブレコーダーが捉えた乱暴運転の映像等を見聞きすると、録音・録画は起きている状況をリアルに感じることができ、その影響力が非常に大きいと感じます。

今回は、職場におけるパワハラ対策で録音に効果があるか?をご紹介していきます。

被害者・加害者・会社、それぞれの立場からお読みいただけると、録音の効果とその恐ろしさを感じていただけるかと思います。

無断録音ってそもそも違法?

「相手方の同意を得ないで行った録音は違法であり、証拠として無効」だとお考えの方が多いかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

刑事訴訟では、国家権力による証拠ねつ造で冤罪が起きる可能性を考え、証拠取得方法には厳格なルールがあります(容疑者の車に勝手にGPS探知機をつけてはいけない等です)。

一方、パワハラは民事で争われるケースになりますが、民事訴訟法において証拠集手法に特に制限はなく、自由に集めてきて良いことになっています。

もっとも、野放しに認めているわけではなく、違法な手段で証拠を集めることは当然認められていません。

パワハラの場合、被害者が自分を守る証拠を集めるために、その場の会話を相手に無断で録音していても、その行為に違法性があると言い切れないと筆者は考えます。

しかし、職場では様々な会話がなされています。職務における機密事項やプライバシー情報なども一緒に録音されてしまったらどうなるでしょうか?

少なくともその音声情報を証拠として利用するのであれば、録音内容を聞かせる相手や利用方法には、細心の注意が必要です。

録音のパワハラへの効果

パワハラの相談を受けた際に、当事者のヒアリングを必ずおこないますが、両者の主張が合致することはなかなかありません。

「言った、言わない」、「発言は認めるが、その趣旨はちがう」などといった話が繰り広げられます。

では、録音があった場合はどうでしょうか?

発言の有無はもちろんのこと、前後の会話の流れから、その発言趣旨も理解されやすくなりますので、やはり録音は大きな効果があります。

では、万能かといえば決してそうではありません。注意点は5つあります。

パワハラを録音する上での5つの注意点

パワハラは多種多様

録音ですから、パワハラを示す音声がなければ当然意味がありません。ただ、パワハラは多種多様な形態で行われています。

常にパワハラ発言をしている非常識者が相手であれば有効ですが、常にそうとは限りません。

いつでも録れない

予め会議室に呼ばれ、その際にパワハラが予想されるのであれば、録音準備してその場に臨めますが、そんなケースばかりではありません。

また、スマホに録音機能があることは誰もが知っていることです。スマホがちらりと面談中に見えたら、相手は警戒して人格者に豹変するかもしれません。

業務指導の範疇?

録音によってパワハラ発言の有無は捉えられますが、その会話がなされる前後の流れや発言内容によっては、「業務上の必要な指導の範囲」とみられるケースも当然あります。

パワハラされたと自分では思っていても、相談窓口等の第三者から「発言内容は厳しいかもしれないが、前後の流れから判断し、発言自体は業務指導の範疇だ」と言われる可能性もあります。

会社が各職場おいて、正しいパワハラの考え方を従業員に研修等を通じて正しく伝える必要がここにあります。

録音内容を本気で証拠とするには

パワハラ被害を相手や会社側に申し出をしても、一向に改善が見られなかった場合には、見切りをつけて労働基準監督署・労働局などに相談をしてあっせんを依頼する場合があります。

その上で、訴訟に踏み切った場合、証拠として提出する録音は全て文字に変換することを求められます。一頃前は音声を文字に変換するのは時間がかかる作業でしたが、最近はソフト等で簡単に文字化することが可能です。

職場に疑心暗鬼が広がる?

2013年2月5日放送のNHKクローズアップ現在で、「広がる“秘密録音”社会」という放送がありました。

職場で退職強要をされている場面を録音し、自分の立場を守るために利用したことが冒頭に紹介されていました。

他の場面では、裁判をきっかけにして「職場に盗聴器が仕掛けられているのでは?」と社長も社員も疑心暗鬼になっている会社の話も紹介されていました。

その会社では、毎日業務開始前に盗聴器のチェックをして、会話が法に触れるのではないかという心配から、職場では一切の日常会話が消えてしまった、とのことです。

同じことが自分の職場で起きたら?と考えるとぞっとします。

録音以外にもあるパワハラの証拠

パワハラの証拠は録音だけに限られるのもではありません。

暴力的行為があれば、医師による証明書、精神的な追い込みであれば、被害者の日誌や専門医による証明、他にはタイムカードや同僚の証言も証拠になりえます。

また、LINEやSNSでパワハラ行為を行っていた場合は、それがそのまま文字化された証拠になります。

まとめ

何とか事態を好転してほしい、と追い詰められた社員がパワハラ行為を録音することは誰も止められませんし、それが公開された場合の効果は物凄いものがあります。

日常生活の中での録音は、自分の外国語発音をチェックするとか講義の復習をするためとか、かなり限られた利用場面ではないでしょうか?

ビジネスではコールセンター等が、顧客対応の向上一環のために利用してること以外はあまり思い当たりません。

社会保険労務士の立場から言えば、職場に録音機器持ち込みを禁止することも可能ですが、果たしてすべての職場にこれができるかといえば、それはNOです。

また、録音行為が、相手の言動に対する不信感や不快感を証明するために行われ出すと、もはや人間関係の修復はできないと感じます。

パワハラは被害者も加害者も会社も誰も得をしない「三方みな損」の行為です。

パワハラがない職場、録音を決意させるまでに至らない職場環境づくりが非常に重要であることが、容易にお分かりいただけるかと思います。

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吉村和也

社労士

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