パワハラ退職は会社都合退職になる?離職者・会社への影響を社労士が解説

パワハラにもうこれ以上の我慢ができなくなって退職を考える場合、

「退職しても次の就職先が見つかるまでの生活費はどうしよう…」

「パワハラにあったのだから、会社都合退職にしてほしいが認めてくれそうにない…」

などの理由で、二の足を踏むケースも少なくないかと思います。

しかし、パワハラで退職した場合は、正当な理由がない自己都合退職よりも、雇用保険から手厚い保障を受けられる場合があります。

一方、会社にとっては、会社都合退職者を出すことがマイナスになることもあります。

今回は、退職を考えている方と会社の両方の視点から、パワハラを原因とする退職がそれぞれにどのような影響をもたらすかをご紹介していきます。

>>【社労士解説】パワハラ問題まとめ〜定義・対策・事例・相談先・訴訟〜

会社都合か自己都合を決めるのは誰?

会社を退職(以下、離職)する際にその理由が「会社都合」か「自己都合」かにより、雇用保険を受給するまでの期間が大きく異なることは広く知られていると思います。

どちらの理由でも、失業認定日から一律7日間の待期期間がありますが、その後の給付制限期間に大きな違いがあります。

解雇(重責解雇を除く)や倒産は「会社都合」とされ、雇用保険から支給される基本手当(いわゆる失業給付)はすぐに受給できる一方で、転職等、正当な理由がない自己都合退職には3カ月間の給付制限期間があります。

このような大きな違いを生む離職理由の判定は、ハローワークが会社と退職者双方から離職票等の書類やヒアリングを通して慎重に判定していきます。

離職票が重要

離職する際には、勤務先からハローワークに対して離職票(雇用保険被保険者離職票―2)という書類が提出されます。

この書類に様々な情報が記載されるのですが、重要なポイントは、離職理由が記載されるということです。

離職理由は予め細かく分類、記入され、会社と離職者が双方で選択するようになっています。

書類フォームはハローワークのHPでご確認いただけます。

実はこの書類には、パワハラと関係する離職理由が記載されていますので以下にご紹介します。

・「事業主または他の労働者から就業環境が著しく害されるような言動(故意の排斥、嫌がらせ等)を受けたと労働者が判断したため
・妊娠、出産、育児休業、介護休業等に係る問題(休業等の申出拒否、妊娠、出産、育児等を理由とする不利益取扱い)があったと労働者が判断した場合

この2つの離職理由はまさに「パワハラ・セクハラ・マタハラ退職」を表わしています。

離職票は会社が最初に記入してハローワークに提出します。

そして後日、離職者もハローワークに出向き、失業認定を受ける際に、本人からも離職理由を確認する決まりになっています。

もし会社が記入した離職理由と相違していれば、離職者からハローワークに対して申し出をすることが可能になっています。

離職者のメリット・特定受給資格者とは?

上記でご紹介した離職理由がハローワークによって真実の離職理由として判定された場合、その離職者は「特定受給資格者」として扱われます。

特定受給資格者は、通常の自己都合退職者よりも手厚い保障を受けることができ、3カ月間の給付制限期間が無いことや、年齢によっては給付期間が延長されるケースもあります。

ハローワークのHPでは特定受給資格者の定義が解りやすく記載されていますので以下に抜粋してご紹介します。

‟上司、 同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者及び事業主が職場における妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者“

ハローワークが判定する際は…

特定受給資格者として判定されるためには、「パワハラで退職した」という証拠が必要です。

ハローワークは会社と離職者の間で離職理由に相違がある場合は確認をします。

これまでもパワハラの証拠集めのことを一連のコラムでご紹介してきましたが、その場面の録音や診断書等が証拠になりえます。また同僚からの証言も証拠となります。

また最初から用意してハローワークに行けない場合は、失業認定を受ける際に窓口で相談にのってくれます。

なお、証拠を提出した結果、たとえそれが本人がパワハラだと思っていても、判定によっては、正当な理由がない自己都合退職として取り扱われます。

会社のデメリットは?

パワハラで退職する社員が増えてくれば、残された社員のモチベーションが上がらないだけでなく、その噂が自然と広まり、応募者が激減することが予想されます。

そればかりではありません。

離職理由が、上記で述べた特定受給資格者と認定され、その数が一定のレベルを超えてくると、会社にも経済的なデメリットが生じます。

具体的に申し上げると助成金に対する影響です。

厚生労働省が出している助成金は組織を健全化し、社員の能力開発を主眼に置いています。

パワハラのような理由で特定受給資格者としての退職が相次ぐと、助成金の趣旨に反していることになるので受給資格がなくなるケースがあります。

(なお、退職後に訴訟などのリスクが残っていることも言うまでもありません)

まとめ

離職理由を最終的に判定するのはハローワークです。

その中でも特定受給資格者として認定されるかどうかによって、離職者と会社の双方に大きな影響が出てきます。

離職者は3カ月の制限期間なく保障を受けられることがメリットになりますが、会社にとってみれば、パワハラによる会社都合退職が相次ぎ一定数を超えると助成金を申請できなくなってきます。

パワハラからやはり良いことは何も生まれてきません。

企業としては、管理職から部下に対するコミュニケーション研修やパワハラの正しい知識を伝えて、パワハラ発生予防に努めることが一番の得策かと思われます。

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吉村和也

社労士

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