残業の平均時間って?厚生労働省と民間のデータから社労士が解説

過剰な残業を原因として「過労死」という言葉があります。海外で「KAROUSHI」とそのまま表記されているくらい、日本独自の事象として捉えられています。

「過労死等防止対策推進法」いう法律もあるくらいですし、日本人は働きすぎだとよく耳にしますが、実際のところ、平均の残業時間はどの位なのでしょうか。

また、平均から見えてくる問題は何でしょうか?

残業問題に関する情報を数回のコラムに分けてご案内します。

>>残業問題まとめ!平均時間・上限規制・違法性など【社労士解説】

残業の定義は?

労働基準法によって、原則1日8時間・週40時間を超える労働は「法定時間外労働」として、その超えた時間に対しては、割増賃金を払うように決められています。

ただし、商業・映画・演劇・保健衛生・接客娯楽の事業所で、常時10人未満の労働者を使用している「特例措置対象事業所」とされる場合は、1日8時間、週44時間が認められています。

この場合は、1日8時間・週44時間を超えた労働が法定時間外労働となり、割増賃金が必要です。

なお、勤務時間が始業9時、終業17時で1時間の昼休みがある会社の場合だと、労働時間は7時間になります。

7時間を超え、8時間までの1時間は「法定時間内労働」になるので、通常の賃金1時間分だけが追加されることになり、割増賃金は発生しません。

今回のコラムではわかりやすくするために、1日8時間・週40時間を超える労働を残業としてひとまず定義させていただきます。

意外に短い?平均残業時間

厚生労働省や総務省が発表しているデータを読み込むと、平均残業時間は以下のようになります。

産業全体で月平均10.4時間

業界別に見て一番多いのは、運送業で月間24.2時間。

(厚生労働省毎月勤労統計 平成30年1月結果速報版から)

非農林業の週労働時間平均39時間

(総務省統計局労働力調査平成30年1月速報から)

この結果をご覧になって「??」と疑問に感じますよね。

想像しているよりもはるかに少ない残業時間です。時々、ニュースでみる未払残業代が発覚した記事は一体何なんでしょう?

実は、厚生労働省も総務省のデータも、回答しているのは企業(雇用主)です。

企業が回答しているわけですから、働いている人の実態と異なる残業時間を答えていても不思議はありません。

まして相手は行政機関ですから、実態に即した残業時間を回答することは、心理的抵抗があるのではないでしょうか。

民間調査での残業平均時間はどうか?

一方、民間調査では結果はどうなるのでしょうか?

リクルートマネージメントソリューションズから公表されている結果がありましたのでご紹介いたします。

抜粋すると、

20~30代の正社員労働者で月間60時間を超える残業は男性66.6%、女性42%
過労死ラインとされる80時間超えは9%
職種別では営業職が月間200時間労働(残業は80時間以上)と一番多い

調査対象年齢帯が限定されていることや調査母数が行政機関の調査とは異なりますが、働いている人が実際に回答しているわけですから、個人的にはこちらの調査結果が実態を反映しているように思えます。

皆さんはどう感じますでしょうか?

2008年の厚生労働省で労働者を対象にした調査がありますが、そちらでは全体の約1割が月間60時間を超える残業があると回答している結果がありました。

45時間と80時間

調査実施主体、回答する対象業種や職種によって、平均残業時間の結果に大きな差が出てくることが明らかです。

そのため、特定の調査結果を自社に当てはめ、残業が多いのか少ないのかを判断することは注意が必要です。

長時間労働が継続すれば疲労は蓄積し、パフォーマンスも下がっていくことは誰もが否定できないことですので、個々の会社が残業時間を考える上で、一番重要な視点は社員の健康を守ることではないでしょうか?

月間45時間を超える残業は健康に影響を与え始め、80時間を超えると過労死との関連が強くなっていくことが厚生労働省の調査で判明しています。

この80時間という目安は過去、過労死が労災認定された際の勤務実態や医師などの総合的な判断によって出てきたものですので、説得力があると考えられます。

まとめ

政府は平成32年までに、企業の中で月平均残業時間が60時間を超える労働者の割合を5%以下とする目標を立てています。

80時間を超える残業が健康に害を与える一つの基準だとすると、60時間を超える労働者を減らそうとするこの計画は、健康管理の視点からは重要計画として今後もクローズアップされるでしょう。

また、さらに残業の割増賃金率改定など様々な議論にも発展しそうです。

残業は、未払い残業代や若手社員のモチベーションへダウン、背景にパワハラが潜んでいる等々、経営上の問題に発展することもあります。

このように考えると、今後、経営者は残業問題への対応・対策を取ることの重要性がますます高くなっていくのではないでしょうか。

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吉村和也

社労士

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