残業60時間で給料の割増はどれくらい?社労士が目安を解説

60時間の残業をした場合、どれくらいの賃金が割増されるのか、今回のコラムで具体的にご紹介していきます。

「60時間」という設定には、

①残業代の割増賃金率
②45時間を超える残業は心身に悪い影響を与え始める
③一企業内で60時間以上の残業をしている社員を5%以下に抑える

といった政府の目標に関連があります。

残業の定義って?

労働基準法によって、1日8時間・週40時間を法定労働時間と定めています。

ただし、商業・映画・演劇業(映画製作を除く)、保健衛生業、接客娯楽業で労働者が10人未満の場合は、週44時間が法定労働時間になり、これを超えた労働時間は法定時間外労働とされ、割増賃金の支払いが必要になります。

会社によっては、就業規則で定められた勤務時間(所定労働時間)が7時間のようなケースがあります(始業9時、終業17時 昼休み1時間)。

この場合は、7時間を超え8時間までの労働時間については割増賃金を支払う必要がなく、通常の賃金1時間分を支払えば違反にはなりません。

また会社は、1週間に1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を法定休日として与える必要があります。

この法定休日に労働させた場合も割増賃金が必要な残業になります。

法定休日に出勤することで、予め振替の休日を設定していた場合(振替休日)は、割増を支払う必要はありませんが、休日労働をした後に、代償として休日を与えた場合(代休)は割増賃金の支払いが必要になります。

なお、36協定を締結しないで法定時間外、法定休日に労働をさせることは違法です。

36協定についてはまた別のコラムにて改めてご紹介させていただきます

残業代の割増率は?

8時間を超える勤務に対しては、25%の割増賃金を最低限支払わなければなりません。

また、午後10時から翌日午前5時までの勤務に対しては、深夜残業とされ、別途25%以上の割増が最低でも必要です。

・8時間を超えた残業→25%
・午後10時以降翌日午前5時まで→50%(25%+25%)

平成22年4月から労働基準法の改正があり、1カ月の法定時間外労働が60時間を超えた場合は、その時点(60時間超えたところ)から50%以上が割増、深夜残業の場合は75%(25%+50%)になります。

なお、60時間を超えた分を休日として付与することも可能になっています。

現在、中小企業の場合はこの50%割増の適用が猶予されていますが、平成34年(2022年)には適用される予定になっています。

恒常的に長時間残業がある企業は、早めにその対策を講じる必要があります。

なお、法定休日の労働に対しては35%の割増が必要です。

そして法定休日の深夜勤務の場合は60%(25%+35%)の割増が必要になります。

計算基礎となる給与は?

割増率が給与のどの部分に対して適用されるのか、この対象によって金額は大きく変わってきます。

労働基準法37条第5項では

「割増賃金の算定基礎となる賃金には家族手当、通勤手当、その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」

とされています。

家族手当は社員の扶養家族人数によって設定されています。

通勤手当は文字通り、会社までの往復交通費です。

ともに労務に直接影響がないため、割増賃金の算定基礎には算入しません。

厚生労働省令では、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時の賃金、1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金となっています。

別居手当は単身赴任者への適用、子女教育手当は家族手当の1種とお考えください。

いずれも労働との関連性が薄いこと、またボーナスや臨時の賃金まで含めると、計算が非常に複雑になることを考慮して基礎からは除かれています。

上記の項目を除き、1時間当たりの平均賃金を算出し、そこに割増率をかけて残業代は計算されます。

サービス残業について

サービス残業という言葉があります。

日本人独自の謙虚な姿勢からこの言葉は生まれ、美徳感すら漂わせますが、法定時間外労働に対して賃金を支払わないことは違法です。

そのことを考慮してか、労働基準監督署等の行政機関では未払い賃金、未払い残業代、と呼ばれることが一般的です。

ちなみに漫画『社畜人ヤブー』(作者:那智泉見/PHP研究所)という作品では

・残業は会社へのおもてなし

・低賃金は控えめな自分へのじらしプレイ

・クレームはお客様からのラブコール

等々、世間で問題になっていることを主人公がサラリと言いのけています。

この作品を読むと、長らく慣習とされてきた日本人の働き方や違法な残業は改善の必要があると改めて思います。

管理監督者は残業代がでない?

社内で管理職に就いたら残業代の対象外になった、というお話はよく聞きます。

たしかに労働基準法41条では、管理監督者には残業や休日出勤のルールが適用されない旨が記載されています。

しかし、「社内の管理職=労働基準法の管理監督者」と必ずしも一致しません。

実際に、大手のハンバーガー店店長が「名ばかり管理職」であると裁判で認められ、残業代が認められた判例もあります。

労働基準法上の管理監督者は、勤務時間は自分に裁量があり、経営に重大な影響を与えうる立場を持つ役職を言います。

かなりの場面では「社内管理職≠労働基準法上の管理監督者」となります。

なお、管理監督者であっても深夜勤務に対しては、労働基準法で対象外になっておらず、この場合は割増賃金の支払いが必要です。

まとめ

残業には割増がつくので、月単位でまとまると金額は大きくなり、経営者にとっても働く方にとっても軽視できない金額になります。

例えば、基本給30万円の社員が60時間残業を平日に行えば、少なくとも7.5万円の残業代が付きます。

さらに、午後10時以降の残業があれば残業代だけで10万円を超えてくることもあります。

60時間の残業は経営者にとってみればコスト増になりますし、仮に残業代を適正に支払っていなければ、未払い残業代を請求する動きが盛んに行われていますので、それは経営上のリスクになります。

社員にとっては家族と過ごす時間や自己啓発の時間を削られ、さらに健康を害する可能性も出てきます。

今後、長時間労働に対しては間違いなく規制が厳しくなるので、労使ともに残業削減を真剣に考えていく必要性がますます上がることは間違いありません。

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吉村和也

社労士

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