健康経営のメリット・デメリット!会社&社員視点でポイント解説

少子高齢化や生産年齢人口の現象という避けられない問題に対応していくために、「国民医療費の削減」「労働生産性向上」が必要だと言われています。

そこで注目されている「健康経営」という考え方があります。

今回は、健康経営のメリットとデメリットを、「会社側」と「社員側」双方の視点でみていきます。

>>健康経営まとめ!概要・メリット・申請方法・事例【健康経営アドバイザーが解説】

そもそも健康経営とは?

「健康経営」とは、社員の健康の維持・増進を企業にとってメリットがある「投資」と考え、経営戦略の一環として社員の健康に投資していくことです。

健康経営の起源は、アメリカ。

1992年に出版された「The Healthy Company」にて経営心理学者ロバート・H・ローゼンが提唱しました。

アメリカは医療費が高いと同時に、日本のような公的保険がなかったため、多い時は国民の15%(4900万人)が無保険者となっていました。

そのため、従業員の健康が企業経営にとっても大きな影響を与えかねません。

このような背景から、社員の健康の維持・増進に対して投資する「健康経営」という概念が生まれました。

日本でも近年、医療費の増加生産年齢人口の減少を背景に国を挙げて注力されています。

会社にとってのメリットとは?

【1】医療費の削減

1つ目のメリットに、医療費削減があります。

従業員が健康になり病院に行く回数が減ることで、企業が負担する医療費も減ることとなります。

【2】労働生産性の向上

2つ目のメリットは、労働生産性の向上です。

健康経営の各施策によって、心身の体調不良による休業や休職者が減ること。

そして、出勤していても調子が悪く、ボーッとしてしまい、生産性が落ちてしまうことを減らしていく効果があります。

特、に後者の「出勤しているけれどパフォーマンスが悪いことによる損失」は、企業が負担する医療費や、休業による損失額よりも大きいと言われています。

アブセンティーズム(欠勤による損失)」

プレゼンティーズム(出勤しているが生産性が下がってしまっていることによる損失)」

という概念によって、心身の不調によって労働生産性がどれくらい低下しているのかを測定する方法が作られ、研究が進められています。

【3】法令遵守・リスクマネジメント

従業員の健康に関しては、罰則規定など、正しく取り組まないことによるデメリットも大きいです。

具体的には、以下のようなリスクが存在します。

・「安全配慮義務」違反として訴訟される(労働契約法)

・衛生管理者・産業医などの必要役職者が未選任の場合50万円以下の罰金(労働安全衛生法)

・労働基準関係法令違反企業として公開される

労働基準関係法令違反に係る公表事案

【4】企業のブランドイメージ向上

間接的な効果として大きいのが、ブランドイメージ向上による影響です。

特に、「採用」や「人材確保」に対するメリットが注目されています。

「ブラック企業」という言葉が社会問題化したり、社員の自殺に関するニュースが流れたりしたことを背景に、就職活動をする学生、親、転職活動をする社会人にとって「健康経営」に対する企業の姿勢が、企業の良し悪しを測る重要な判断材料となっています。

また、人事領域のみでなく、医療・健康に関わるような商品・サービスを提供している企業の場合、商品・サービスを営業する上での信頼獲得にも役立つでしょう。

【5】融資を受けやすくなる

広島銀行を先駆けに、健康経営に取り組む企業が、優先的に融資を受けやすくなるような金融商品の開発が進んでいます。

健康経営に取り組む企業は株価の伸びも良い、と言われています。

今後、より多くの金融商品が開発されてくることで、資本市場で有利になることが健康経営のメリットの1つになることが予測されます。

社員にとってのメリットとは?

【1】健康になる

社員にとっての最大のメリットは、「健康になる」ということです。

健康経営の施策によって、健康に対する意識づけや、正しい知識を学ぶことができ、生活習慣の改善などにつながるでしょう。

【2】仕事を生き生きとできるようになる

健康経営を通して、職場環境の改善や健康のためのキャンペーンを通して、心身の健康を維持・増進できる会社になれば、仕事を生き生きとできるようになるでしょう。

心身に多大な負担をかけて、辛い思いをして仕事をしている場合よりも、健全な労働環境のもとで仕事をしている方が、個人の健康にとっても、会社にとってもメリットがあるはずです。

「健康と業績はトレードオフなのでは?」と感じる方もいるかもしれません。

しかし近年では、「ワークエンゲージメント」や「ポジティブメンタルヘルス」など、仕事を通して活力を得るという考えや、メンタルヘルス対策をマイナスからゼロに引き上げるだけでなく、より生き生きと生産性の高い状態にしようという考えに基づいた概念の研究が進められています。

必ずしも「仕事=ストレス」というわけではなく、むしろ仕事を通して、生き生きと活力を得ることができると考えられるようになってきています。

【3】自分の会社に誇りを持てる

仕事でしっかり成果は出している。

社内でも、社会的にも認められている。

けれど、現場のメンバーは疲弊していて休職者もたくさんいる…。

そのような職場では誇りを持って働き続けることはやはり難しいですよね。

会社にとってのデリットとは?

【1】投資対効果が見えにくい

健康経営のデメリットに、投資対効果が可視化されにくいということがあります。

前述した「アブセンティーズム」「プレゼンティーズム」を用いた健康経営総コストを計測する手法などは開発されていますが、信頼性・妥当性が高いかというと何とも言えないところです。

また、成果が必ずしも数字の上下だけで示せるものでもないことが健康経営の難しさです。

例えば、「休職者数がゼロになった」ということは、一見すると喜ばしいことかもしれません。

ですが、実は「休職しにくい雰囲気が蔓延し、今まで休職していた人が退職するように変わっただけ」だったとしたら、良い組織になったとは言い難いでしょう。

このように、絶対的な数字だけで成果を示すことが難しい点が、健康経営の投資対効果の把握を困難にしています。

【2】データ収集・管理にコストがかかる

「健康経営」では、主に労務関連と健康関連のデータを扱うこととなります。

この2領域のデータを1人の担当者が管理していない会社も多いでしょう。

複数の部署・担当者が連携してデータを収集し、管理していく必要性があります。

また、健康に関するデータは重要な個人情報となるためセキュリティを保つことやプライバシーに配慮することなど、厳重な管理も求められます。

【3】専門家の活用にコストがかかる

また、健康に関しては産業医を中心に、医師、保健師等の専門家活用が不可欠だと言っても過言ではありません。

さらに、経営や人事・労務の専門家の力も活用する必要もあるかもしれません。

外部委託や専門性を持った人材の採用などにコストがかかることになると思われます。

社員にとってのデリットとは?

【1】少し手間がかかる

社員にとって「健康経営」のデメリットは、少し面倒な手間がかかるということでしょう。

定期検診、ストレスチェック、アンケートの回収、各種施策への参加などで、本業とは別の時間を使う必要が出てきてしまいます。

【2】センシティブ情報への不安

健康に関する情報はセンシティブなもの。人には知られたくないものも少なくないでしょう。

例えば、職場の人には知られたくない情報が漏れてしまったり、健康情報が理由で昇級できなかったりすることへの抵抗感を持つ人は意外と多いものです。

事業者側が情報の管理方法や共有範囲について明示し、安心して社員が健康経営の施策に参加できるようにしましょう。

【3】成果が出なければ、回り回って給料が減る?

間接的にではありますが、健康経営の投資対効果が悪い場合、回り回って減給や福利厚生のコストカットに繋がるかもしれません。

社員1人1人が主体的に健康について考え、施策への参加や職場環境の改善を通じてコミットしていくことが大切だと言えるでしょう。

まとめ

「健康経営」は、経営戦略の一環として投資する以上、それに見合う「成果」が求められます。

成果を出し、メリットを最大限活用できるよう健康経営に取り組んでいきましょう。

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田中康雅

健康経営アドバイザー

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